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 人は、心の奥底の一番深いところで「自分はこの世に何をしに来たのだろう」「自分はこの世の中で何をすべきなのだろう」という疑問を抱えながら生きているように思います。
 ある日、小学二年生の息子から「なんで人間は生きているの?」という質問をされ、突然の不意打ちにたじろいでしまいました。日々の生活に追われ、心の奥底にある疑問に対して鈍感になっていた自分が「ハッ」とした瞬間でした。
「この世の中の出来事は、すべての事柄が、必要な時に、絶妙なタイミングで、必然的に生ずるのもである」こんな考え方をしていた私は、この時、何かに背中を押されたように感じました。
 小さな子供から発せられた問いは、実は自分自身が常に感じていた疑問でもあったのです。
「今まで自分が思い感じていたことを整理してみようかな」自然とそんな気分になりました。
 この本は、自分自身の心の中をもう一度見てみようと、人生の折り返し地点で、ちょっと立ち止まって書いたものです。

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   推薦の言葉
●●●●●推薦の言葉の中身●●●●●






















































       ◎ 目 次

  
第一章 ねえ、お父さん、なんで人間は生きているの?
     (1)なんだよ、いきなり
     (2)小さくても、ひとつの人間
     (3)旅はこれから

第二章 心臓病のおじいちゃん、認知症のおばあちゃん
     (1)おじいちゃんが入院した
     (2)漬物工場の前の松本さんはどこにいるの

第三章 大どんでん返し
     (1)グループホームは、きっと、いいところ
     (2)施設入所の予感
     (3)決めるのは、雅さんだよ
     (4)夫の寂しさ、息子の決断
     (5)ようやく得た安堵感
     (6)ずっと、お芝居していくことは、できません

第四章 生きることに挑戦した東京のおじいちゃん
     (1)君たちの記憶の中に
     (2)おじいちゃんが死んで思うこと
     (3)生きるための挑戦
     (4)生きるための挑戦U
     (5)生きる希望を持ち続けた人

第五章 ピンクのランドセル
     (1)希望のランドセルを積んで
     (2)最後のお正月 
   
第六章 愛する人がいるから、生きていたい
     (1)おじいちゃんからの手紙
     (2)おばあちゃんへの手紙
     (3)だから、生きていたかったんだね

第七章 「愛すること」の価値観が変わったとき
     (1)ドイツ強制収容所「アウシュヴィッツ」
     (2)「愛」それは、生きるための最後の砦
     (3)「愛」それは、計り知れない心のエネルギー

第八章 おばあちゃんが「ふかふか・はうす」にやって来た
     (1)カーテンレールに干されたタオル
     (2)ぼくらは、みんな、ボケている
     (3)あなたは史郎さん? 伸夫さん?
     (4)「もう、いいね」
     (5)ボケるが勝ち
     (6)希望の光が灯った
     (7)バトンタッチ
     (8)おばあちゃんが「ふかふか・はうす」にやって来た

第九章 きっと、みんな、つながっている
     (1)すべての生命は「ひとつながり」のもの
     (2)自分に感謝している人たち
     (3)「集合的無意識」ユングさん
     (4)「宇宙は二重構造」ボームさん
     (5)きっと、みんな、つながっている

第十章 ずっと前からソウルメイト
     (1)もしかしたら、もしかして
     (2)生きがいの源泉
     (3)百匹目の猿

第十一章 ソウルメイトの君たちへ
     (1)お父さんとお母さんの心の準備
     (2)「天と地」の交流……母の願いをいのちがキャッチする
     (3)君たちが選んだ「お父さんとお母さん」なのだから

























  まえがき
 この本は、自分自身の心の中をもう一度見てみようと、人生の折り返し地点で、ちょっと立ち止まって書いたものです。
 自分が、ちょうど人生の折り返し地点に立った時、自分を育ててくれた両親は人生の最終章を生きていました。
 闘病生活をしながら必死に生きようとした父親。認知症になりながらも自立した生活を送ろうとして頑張っていた母親。年老いた二人の後ろ姿は息子の私にも「生きること」への尊いメッセージを与えてくれました。
「おじいちゃん・おばあちゃんの生きる姿から、子供たちも何かを感じてくれるのではないだろうか」そんな思いもあって、おじいちゃん・おばあちゃんの生活の一部分を子供たちに向けて綴ってみました。
 自分が両親から伝えてもらったメッセージ。自分の子供たちへ、親として伝えたいメッセージ。どこの家庭でも、そんな心のメッセージのリレーが行われているのかもしれません。
 自分が愛されているという思い。そして家族みんながつながっているという思い。この世に生れた小さな命が健康な心を育むためには、そのように感じられることが大切だと思います。
 日々成長していく命にとって、どんなつながりが大切なのでしょうか。
 それは、自分がいま思っているよりもはるかに大きな世界観の中ですでに自分が生きているという思いではないでしょうか。自分が大きな宇宙の中のかけがえのない存在として、すべての生命とつながっている、という思い。
 自分が大自然の大いなる力の中で、今ここに生かされているのではないだろうか。自分が宇宙的な存在として、宇宙の愛とつながって、今ここに生かされているのではないだろうか。


















(2)ぼくらは、みんな、ボケている

 
 おばあちゃんは、お父さんが清瀬の家に帰る度に、いろいろな攻撃を仕掛けてくる。
「ココアを飲みなさい攻撃」や「お茶もっていって攻撃」、「お小遣いあげてないわ攻撃」などそのレパートリーは様々だ。
 もちろん悪気があって攻撃してくるわけでなく、母親として息子に何かしてあげたいのだろう。ココアを気に入っていたおばあちゃんは「ココアを飲みなさい」と勧めてくれる。
 
「今、飲んだからいらないよ」と言ってもすぐに忘れてしまう。またやさしい笑顔で「ココア飲みなさい」と勧めてくれるのである。
「伸夫さん、ココア、飲みなさい」
「今、飲んだから、いらないよ」
「伸夫さん、ココア、飲みなさい」
「後で、いただくね」
「伸夫さん、ココア飲みなさい」
「もう少したったら、いただくね」
 3回や4回ならば、笑顔で対応できる。しかし、7回、8回、9回となってくると、笑顔が消えて、かなりつらくなってくる。
 母親の我が子を思う気持ちであると、わかってはいるが、だんだんと追い詰められていく自分がいるのである。
「ココア飲みなさい攻撃をやめてくれ」黙って心の中で叫ぶしかない。
 
「お茶もっていって攻撃」はもっと強烈だ。
「のぶちゃんにお土産あげてないわね、お茶もっていきなさい」
 棚にある狭山茶をお土産に持たせようとしてくれる。
「もらったから、もういいよ」しばらくすると
「のぶちゃんにお土産あげてないわね、お茶もっていきなさい」
「もらったから、もういいよ」
 棚にあるお茶がなくなると、今度は「お茶を買ってくる」と外に出かけようとする。
「外に出ると迷子になるから外に出ないで」やさしくお願いしたつもりがだんだんと表情が変わってくる。
「私は、一歩もこの家から出てはいけないの」表情が険しくなり攻撃的な態度になっていく。
「難しいな」少し黙っていると「私はこの家にはいられないようですから、北海道に帰ります」と、だんだん話がややこしくなっていく。
 
 こんな状況が、史郎君と二人でいるときも繰り返されているのだろうか?
 一泊二日や二泊三日の滞在で、かなり介護疲れを感じてしまうのに、同居している史郎君は大丈夫なのだろか。史郎君の日ごろの苦労をあらためて感じさせられる。
 朝早く出勤するときに「この家を出て行く」と言われて困ったこと。大切な書類をなくされて困ったこと。分別ゴミの決まりを守れず、ご近所にご迷惑をかけていること。何週間も風呂に入らないのではたはた困っていること、などなど。
 史郎君の話を聞けばかなり大変な状況である。
 そんな状況の中でも冗談を言ってはおばあちゃんを笑わせている史郎君は、いつの頃からか介護の達人になったようだ。
 おばあちゃんが混乱して表情が険しくなってくると、絶妙のタイミングで冗談を言って、おばあちゃんを笑わせてしまう。しばらく笑っているとおばあちゃんは自分が怒っていたこと自体すっかり忘れてしまう。
 史郎君が歌いだした。
「僕らはみんなボケている ボケているからうれしんだ」
「僕らはみんなボケている ボケているからたのしんだ」
 おばあちゃんもくすくす笑っている
「手のひらを太陽に すかしてみればー まっかにながれる ぼくのちしお」
「みみずだーって おけらだーって あめんぼだーって」
「みんなみんな ボケているんだ ともだちなーんだー」
 こんな替え歌、親子でなければ、歌えない。しっかり看ている人にしか、歌えない。
 
 (3)あなたは史郎さん? 伸夫さん?
 ある日、史郎君が気分転換のため温泉に行くというのでお父さんが三日間、おばあちゃんと過ごすことになりました。
 お父さんは史郎君と違ってお料理が上手ではありません。この三日間の間のメニューをどうするか、これがさしあたっての課題でした。
 焼きそば、チャーハン、おでん、クリームシチュー、とん汁、このあたりで勝負しよう。野菜やお肉をゆでてしゃぶしゃぶみたいに食べてもいいし、刺身やお惣菜を買ってきてもいいし、何とかなるな、普段使っていない頭を働かせてシミュレーションしました。
 近くにあるスーパー「いなげや」で買い物を済ませ、簡単にできる、というよりもほとんどできているおでんを夕食のおかずにしました。
 おばあちゃんと二人で夕食を食べていると、おばあちゃんが不思議そうに言います。
「あなたは伸夫さん?」
 この頃になると、どちらが史郎で、どちらが伸夫なのか、自分の息子の存在もはっきりわからなくなり、何度も確かめているようでした。
「史郎さんは死んじゃったの?」
「死んじゃったのは隆二さんだよ。史郎さんは死んでないよ」
 自分の夫が亡くなったのか、自分の息子が死んじゃったのか、家族のことでさえわからずに混乱してしまう様子です。
「あなたは、伸夫さん?」何回も、何回も繰り返して理解しようとしている様子です。
 普段一緒に生活している史郎君がいなくて、突然次男の伸夫が目の前にいるので状況が把握できないのでしょう。
「雅さん、史郎君は温泉に行って伸夫が来ているんだよ」
「史郎君は死んでないから、またこの家に帰ってくるよ」
 こんな変な会話が我が家の日常的な会話になっていました。
 夕食を終え、台所で後片付けを済まし、大好きなテレビ、格闘技のK1を見ていると、おばあちゃんも真剣になって見てしまいます。
「こんなの私、初めて見るわ」「なんだか気持ち悪くておっかないわ」ぶつぶつ言いながら隣の部屋に逃げていきます。
 五分くらいすると、またテレビの前に座って「こんなの私、初めて見るわ」「なんだか気持ち悪くておっかないわ」落ち着かない様子で隣の部屋に行ってしまいました。
 五分くらいすると、またテレビの前に座ります。「こんなの私、初めて見るわ」「なんだか気持ち悪くておっかないわ」
 何回も繰り返し言われては、お父さんも落ち着いて見ていられません。大好きなK1なのに、とっても見たいのに、テレビを消さないとおばあちゃんがいつまでも落ち着かない様子です。
「ハアー、テレビも自由に見れないよ」テレビを消してソファーに横になって、ふて寝をするしかありません。
 
 好きなK1も見られないし、別にやることもないから風呂にでも入って寝るかな。
「雅さん、お風呂に入ってください」さりげなく聞くと
「私は毎日入っているから、のぶちゃん、入りなさい」いかにも毎日入っているように言う。
 しかし、史郎君が言うにはここ一ヶ月以上はお風呂に入っていないらしい。
 お風呂に入るように勧めても、なかなか入ってくれずに困っている、と言っていました。
 
「雅さん、お風呂にお湯を入れたから、入ってください」
「私は毎日入っているから、のぶちゃん、入りなさい」
 おばあちゃんは自分では、毎日お風呂に入っているつもりでいるのだろうか?
「雅さん、お風呂に入ると気持ちがいいから、入ってください」
「私は毎日入っているから、のぶちゃん、入りなさい」
 何度かトライしてみたが、おばあちゃんは風呂に入る気持ちにはならないらしい。
「面倒くさいからいいや、一年風呂に入らなくても、死ぬわけではないしな」さっさと服を脱いで風呂に入りました。
「ハアー、これは大変だな」湯ぶねの中で、おばあちゃんと毎日一緒に生活している史郎君の苦労を思いました。
 
 おばあちゃんと同じ部屋に布団を敷いて、早めに寝ることにしました。
「おばあちゃんと生活していると精神的にかなり疲れるな、史郎君はこんな生活でよく頑張っているな」
「入所申請をしている、最上町のグループホーム、早く順番が来ないかな」
 こんなことを思いながらいつの間にやら眠ってしまいました。
 夜中にふと、人の気配に気づきました。目を開けると目の前におばあちゃんの顔があるじゃありませんか。
 鼻と鼻とがぶつからんばかりに顔を近づけて、目を大きく見開いて、お父さんの顔をじっと覗き込んでいるのです。
「何? どうしたの」、びくっとして身構えました。
「あなたは史郎さん?」おばあちゃんが真剣な顔で聞いてきます。
「僕は伸夫だよ。史郎さんは温泉に行って、伸夫がここにいるんだよ」
「あなたは伸夫さん?」「私は何をすればいいの?」どうしたことか、とても困って混乱している様子です。
「私は何もわからなくなったから、ここを出て行きます」一人で真剣に困っている。
「今は夜中だから、朝になったら相談しようよ」
「今は夜中なの? 朝になったら何を相談するの?」
「ここは雅さんの家だから、雅さんはこの家にいていいんだよ」
「ここは、私の住んでいる家なの? そんなこと初めて聞かされたわ」
「ここは、雅さんがずうっと住んでいる家だよ」
「ここは私の家だって、だれが決めたの、きちんとした証拠があるの?」
「証拠もあるし、ここは雅さんの家だから、心配しないで寝ていていいんだよ」
「そんなこと、初めて聞いたわ。なんであなたがそんなこと知っているの?」
「私はこの家にいられないんだったら、北海道へ帰ります」
「私がこの家にいてはいけないって、あなたが今、言ったの?」
 混乱している感情はどんどんエスカレートしていき、一人でパニックになってしまうようです。
 どうにかその場を落ち着かせておばあちゃんを布団に寝かせました。
 おばあちゃんの険しい顔、混乱して困り果てた姿、そんなおばあちゃんを見てお父さんも悲しくなりました。
 
「これはすでに限界を超えている。ボケたおばあちゃんが一人で家にいるなんて危険すぎる」
 布団の中でお父さんは、天国にいるおじいちゃんに手を合わせました。
「お父さん、もう少し、もう少しの間、最上町のグループホームが空くまで、なんとか雅さんを守ってください」溢れる涙をぬぐいながら、何度も何度もおじいちゃんにお願いしました。
 こんな混乱した状態を毎晩のように繰り返しているのだろうか。
 疲労困ぱいした史郎君が介護ノイローゼにでもならなければいいが。そして当の雅さんもこんな状態ではかなりしんどいであろう。
 今の自分にできることは、こうやって山形から通ってくること、できる限り多く実家に帰り兄をフォローし、また母の近くにいてあげることしかない。そして最上町のグループホームに一日でも早く入所できるように祈ることしかできないのである。
 


 あ、ゴメンナサイ。立ち読み部分はここで終わりなんです。ここまで読んで下さって有りがとうございます。
 このあともっと面白くなりますから買っていただけるとすごく嬉しいです。 






























読者感想文
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