「看護婦さん出番です!!」( 明窓出版 Web立ち読み Site )

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病院には、ドラマがある。そして看護婦は、ドラマの主人公である患者さんのプライバシーに立ち入り、その人生をかいま見ることになる。
 かつて、私が看護婦として配属された病棟で、私は多くのさまざまな症例に出会った。新聞にも大きく採り上げられた爆発事故や、やくざの抗争による事故もあった。
見るからに大きな腫瘤ができているにもかかわらず、人の目も気にせず、堂々としている人や、ほんの小さなあざに悩み苦しんで、手術を受ける人もいた。

前書き 目次 本文70%

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         林 直美 著





 看護婦さん出番です!!





                                   明窓出版



















   推薦の言葉
●●●●●推薦の言葉の中身●●●●●

































 はじめに

 病院には、ドラマがある。そして看護婦は、ドラマの主人公である患者さんのプライバシーに立ち入り、その人生をかいま見ることになる。
 作り物ではない、本物の人生ドラマに、数多く立ち会う仕事をしていると、自分自身の考え方にも、いろいろな影響があったように思う。
 私は今、人間は生きている限り、何らかの、背負わなければならない苦しみを与えられるものだ≠ニいう思いを強くしている。病棟で、奇形、事故によるけが、末期癌など、さまざまな症例に出会った。
 そこには、自分たちではどうすることもできない何かが、確かにあった。そして、押し寄せてくる大きな波に翻弄されてしまう、そういう時が必ずめぐってくる。
 この世には、いろいろな人間がいる。健康に生まれながら、恐ろしい病気にかかってしまう人もいれば、生まれた時から、すでに過酷な運命を持った人もいる。        後略

                                     林 直美

























   目 次


   はじめに ……………… 5

  病棟の事情 ……………… 7
  傷は我慢しない ……………… 13
  金歯を捜せ ……………… 18
  新人看護婦の頃 ……………… 22
  少女の運命 ……………… 31
  無断外泊 ……………… 37
  看護婦いろいろ ……………… 45
  不自然な傷 ……………… 58
  人は見かけによらぬもの ……………… 68
  事故の後 ……………… 76
  消えていく舌 ……………… 83
  あぶない患者さん ……………… 90
  二枚目医師 ……………… 102
  それぞれの思い ……………… 112
  きついひと言 ……………… 120
  頭蓋骨の手術 ……………… 126
  変 身 ……………… 133
  失 敗 ……………… 142
  仇討ち ……………… 147
  病棟怪談話 ……………… 154
  不安でたまらない ……………… 163
  もらい泣き ……………… 172
  和泉さんの場合 ……………… 176
  女はつらいよ ……………… 183
  美人になろうね ……………… 190
  剃 毛 ……………… 197

   おわりに ……………… 206
























 傷は我慢しない


 大阪さんは二十三歳の男性で、形成外科へ入院中の、右手の人差し指、中指、薬指の完全切断の患者さんである。彼は漁師で、作業中に、網によって引き起こされた事故で、受傷した。救命救急センターへ緊急入院し、すぐに切断された三本の指の再接着術を受けた。状態が落ち着くと、まもなく病棟へ転棟となった。
 二ヶ月近く入院していると、受傷時のショックも表面的には落ち着き、病棟にも慣れ、次第に、大阪さん本来の軽い性格が現れ始めた。
 ところで、いわゆる大部屋には、性別はもちろんのこと、症例も年齢もわりと似通った患者さんを同室にできるよう、可能な限り配慮している。大阪さんのいる二号室は六人部屋で、比較的若い男性の患者さんが集まっていた。そうなると、どういう入院生活が送られているのか、ある程度想像できてしまう。
 午前中は、回診や処置のため、結構患者さんも忙しくて、遊んでいる暇はないのだが、午後になると、まるでディスコのようににぎやかになった。大阪さんを中心にして、誰かが持ってきたアイドル歌手の曲を流し、患者さんみんなで、歌ったり踊ったりしているのだ。足に傷があるため、まだ歩行許可のおりていない患者さんも、ベッドの上で、自分の足のギプスをお箸でたたいて、リズムを取ったりしながら、思い思いに楽しんでいる。
 退屈な入院生活で、気持ちはわからないわけでもなく、看護婦は時々、簡易ディスコをのぞいて、彼らがそれぞれに医師の指示を守ってくれているか、チェックした。
「ほら、腕、ちゃんとあげておいてくださいね。むくみますから」
 切断指(腕や足だと切断肢≠ニなる)の場合、患肢挙上といって、手術をした指や腕を下げないように、せめて心臓よりも上へあげておくように指示する。あげておくことで、血のかえりがよく、縫い合わせた傷に負担がかからない。このことは、再接着術後の患者さんに、ぜひ守ってもらいたい、大切なことの一つである。
「はーい、はい。ばっちりでぇす。看護婦さんも、一緒に踊れへん?」
「あはは、そうですね。ほんまは踊りたいところやけど、また今度にさせてもらいますわ。それから、ボリューム、気をつけてくださいね」
 大阪さんは、包帯で巻かれて大きくなった手を高くあげて、音楽を聞きながら、体をゆらゆらさせて、楽しそうに踊っていた。
 また、ある午後、検温に行くと、部屋はもぬけのからで、誰もいない。
「まったく、検温の時間には、部屋にいるようにいつもたのんでいるのに、どこ、ほっつき歩いてるんだか、困ったものよねえ」
 たいていは、病院の一階の喫茶店にたむろしているようで、院内放送で呼び出してもらうことも、しょっちゅうあった。
「あれ? 塩屋さんもいてへんよ。塩屋さんって、確か、病棟内歩行の許可しかなかったはずやけど……? 一緒に行ったのかなあ」
 まだ自由に歩行できる許可のおりていない患者さんまで、すっかり困った方向へ影響を受けていた。大阪さんは、同室患者さんだけでなく、他の部屋の患者さんたちも、よく引き連れて歩いていた。当時は小学生の患者さんも入院していたため、病棟スタッフは、大阪さんの行動には十分注意せねばならず、いささかまいっていた。

 大阪さんの行動が、ますますエスカレートしているように感じられた頃、決して医師の陰謀が隠されていたとは思いたくないが、もう一度、ベッドでおとなしくしてもらおうということになった。再接着の手術後、経過がよくない、状態の悪い人差し指に肉をつけるため、有茎皮弁植皮術を行うことになったのである。
 大阪さんの手術を簡単に説明すると、まず、血行が悪いために腐ってきた、人差し指の先の、黒いミイラ化した部分をきれいにし、手術でその人差し指を、本人の下腹部に埋め込んで、そのまま固定する。腹の皮膚を切り離さないで、指に植皮するわけである。指の肉になる部分に、腹の皮膚内からも、毛細血管が育ってきて、血行がうまくいくと、皮膚が指に生着する。しっかり指の血管が育ってきて、状態が落ち着くと、再度手術を行い、指を腹からうまく切り離すという方法である。
 大阪さんは右手を自分のお腹に縫いつけた状態で、約十日間、ベッド上安静を強いられた。耐えに耐えた彼は、ようやく固定のままの状態で、トイレ歩行が許可された。
「いいですか? わかっているとは思いますけど、トイレだけですよ、歩いてもいいのは。くれぐれも、守ってくださいね」
「ははあーっ」
 大阪さんは神妙に返事はしたが、内心は大喜びである。最初の手術の時とは違う。何もかもに慣れている彼は、さっそくトイレにかこつけて、うろうろし始めた。下腹にくっついている指をかばうようにして歩くので、ぎこちなく、ゆっくりではあったが、それでも、彼はにぎやかに廊下を歩いた。注意すると素直に聞き入れたが、その時だけである。ナースステーションでも、すぐに話題になった。
「ちょっと、危ないんじゃないの? 大阪さん、ちっともわかってへんわ」

 あ、ゴメンナサイ。立ち読み部分はここで終わりなんです。ここまで読んで下さって有りがとうございます。
 このあともっと面白くなりますから買っていただけるとすごく嬉しいです。 


















 おわりに


 この世の中には、想像もできないような、いろいろな病気やけががあるものだ。しかし、研究や努力によって、それを克服する医療が発展しつつあることは、ほんとうにすばらしいことだと思う。
 ただ、病気やけがをなおすのは、患者さん自身ではないだろうか。医者や看護婦をはじめとする医療従事者は、最新の医療技術を使って、患者さんの自然治癒力の、手助けをしているにすぎないのだと、私は考えている。
 かつて、私が看護婦として配属された病棟で、私は多くのさまざまな症例に出会った。新聞にも大きく採り上げられた爆発事故や、やくざの抗争による事故もあった。あまりに大きな腫瘤ができているにもかかわらず、人の目も気にせず、堂々としてきた人や、ほんの小さなあざに悩み苦しんで、手術を受ける人もいた。         後略
























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 こういうこともある。うんうん、とすなおにうなづいたりしながら、又、私のいる病院ではこうだな等と考えながら読ませて頂きました。楽しく、何かストレス解消になりました。 (広島県 N)