最近の親は子供が志望校に合格するためならなんでもするのが普通なのに、あの二人は後押しどころか声をかけようともしない。

 僕がそのことを二人に言ったら、これはあなたの勉強なんだから、自分一人の力でやりなさいとあっさりと言いきられた。しかもお金だけは置いておくから、あとは自分でなにかつくって適当にやってくれだって。

 僕はこのときほど、親たちをうらめしく思ったことはない。
 もちろんつきっきりで勉強を見てほしいといっているんじゃない。
 自分の勉強は自分の力でやりなさいとか、いかにも放任主義的なことを言っていながら、期待だけはどの親よりもかけている。

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         大野 明 著





 革命はネズミとともにやってくる


その種において完全なものはその種を超越する 〜ゲーテ〜




                                   明窓出版



















   推薦の言葉
●●●●●推薦の言葉の中身●●●●●

































  まえがき

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       目 次




●●●●●目次の中身●●●●●


























革命はネズミとともにやってくる






 僕は一週間後にひかえたテストのために、ゆううつな日々をすごしていた。
 期末テストは国語や数学をはじめ、七科目もある。そのため僕はどれから手をつけていいのかわからず、勉強はいっこうに進まなかった。
 僕の通っている学校はいわゆる進学校なので、テストの結果は今後の進路を決めるうえでかなり重要な位置をしめていた。
 そのためこんな風にテストが直前までせまってくると、まわりのみんなは急に神経質になって、お互いにあまり口を聞かなくなった。そのうえ学校の授業も休みになるのでほとんど友達と会うこともない。
 だからほかのみんながいったいどうやって勉強しているのか、またどのくらいのところまで進んでいるのかといったような様子がわからず、そのことが今の僕を必要以上にあせらせている原因にもなっていた。
 たしかに学校が休みになるのはうれしい。
 だけど自分できちんと計画をたてて効率よく勉強ができるやつならともかく、僕みたいにいつもまわりの様子をうかがいながらじゃないと勉強ができない人間にとって、この休みは苦痛以外なにものでもなかった。
 僕がこうやって何もしないでいる間にも、どんどんと差が開いているかと思うと、夜もおちおち寝ていられない。
 それに僕がゆううつな日々をすごしているのは、それだけが理由じゃなかった。
 親たち二人が旅行に出ていたため、いま家には僕一人しかいないのだ。なんでも二人は結婚してから今年でちょうど二十周年になるとかで、その記念のための旅行に出ていた。
 旅行に出るのはいい。だけどなにも自分の息子のテスト前に、しかも来年の受験を大きく左右するであろうこの中学二年最後の期末テストの時期に旅行する親がどこにいるんだ。
 少しぐらい予定をずらすとか、一週間の予定を二泊三日にするとかいろいろあっただろうに、僕の親たちはそんなこと考えもしない。最近の親は子供が志望校に合格するためならなんでもするのが普通なのに、あの二人は後押しどころか声をかけようともしない。
 僕がそのことを二人に言ったら、これはあなたの勉強なんだから、自分一人の力でやりなさいとあっさりと言いきられた。しかもお金だけは置いておくから、あとは自分でなにかつくって適当にやってくれだって。
 僕はこのときほど、親たちをうらめしく思ったことはない。
 もちろんつきっきりで勉強を見てほしいといっているんじゃない。
 自分の勉強は自分の力でやりなさいとか、いかにも放任主義的なことを言っていながら、期待だけはどの親よりもかけている。僕はそこが気にいらないのだ。
 父親など自分がなれなかったからといって、僕を医者にしたいらしい。 
 いわゆる自分がはたせなかった夢を、子供に押しつけようとする典型的な親だ。自分の頭を考えれば、僕が医者になれるかどうかなんてすぐにわかるだろうに、期待をかけるだけかけておいて、自分たちは好きなときに好きなことをする。この無責任さがゆるせない。
 僕はいっそのこと、勉強をほうりだして遊びに出かけてしまおうかと思った。
 だけどよく考えたら、そんなことをして一番損をするのは自分だったし、こんなくだらない理由で勉強をやめにするのもなんだかしゃくだったので、しかたなく一人で留守番をすることにした。
 たとえどんな理由があろうとも、これは僕自身の問題なのだ。
 どうあがいたところで試験そのものがなくなるわけじゃないし、誰も助けてはくれない。だからとりあえず今はがまんして勉強するしかない。僕は自分自身にそう言い聞かせて机にむかった。

 それからしばらくして、僕の前に一匹のネズミが現われた。 
 最初は単語を覚えるのに夢中で気がつかなかったけど、机の下で何か物音がするので見たら、そこにネズミがいたのだ。
 そのネズミはからだがまっ白で、かなり小さかった。だけど小さいわりには表情がしっかりとしていて、何やら興味ぶかげに僕の顔を見上げている。
 たしかに親たちが旅行に出てから掃除も洗濯もしていない。だからと言ってこんな都会にネズミがでるなんて思ってもいなかった。それにいったいどこから入ってきたんだろう。部屋のドアはさっきからしまったままだし、窓も開いていなかった。
 だけどそのネズミはしばらく僕の顔をながめると、すぐに本棚の後ろに消えてしまった。
 まあ、いいや。ネズミが出たからといって驚いているひまはない。今の僕はたかだか一匹のネズミにかまっている場合じゃないのだ。
 なにせテストまであと一週間しかない。
 僕は進学校に通っているとはいえ、正直言って入学できたのはほとんどが運だから、毎日の授業についていくのがせいいっぱいで、成績は悪かった。だからもし今度のテストで赤点なんかとったら、進学どころか進級すらあぶない。
 だから僕はネズミのことはすぐに忘れて机にむかった。
 それから一時間ほどたったころだろうか。さっきのネズミがまたあらわれた。しかも気がついたら今度は机の上にいたのだ。
 そのネズミはまるで僕の教科書に興味があるかのように、本をじっとながめていた。
 僕はそれを見たとたん、急にいたずらごころがわいてきて、そのネズミをつかまえようとした。
 だけどすぐに気がつかれてしまい、ネズミは僕の手をかわすと机の上から飛び降りて、そのまま小走りにドアと床のすきまから出ていってしまった。
 いったいあのネズミは何をしに来たんだろう。
 僕は不思議に思いながらも、また勉強を続けた。

 それからしばらくして、僕は夕食をとるために台所へ行った。
 始めのうちは母親が材料を買っておいてくれたので、それらで適当に作ればよかった。
 時間のことを考えると、コンビニの弁当でもよかったけど、さすがに毎日はつらい。だから僕は朝と昼は外で買って、夕食だけは自分で作ることにしたのだ。
 だけどおかしなことに、僕が冷蔵庫を開けたら、なかにあったはずの食べ物がなくなっていた。昨日の夜開けたときには、まだかなり残っていたのに、今見たら野菜や肉などが全部なくなっていたのだ。
 その瞬間、僕の頭の中にさっきのネズミの姿がうかんだ。あのネズミが冷蔵庫の中身を持っていったんだ。
 だけどそれにしては量が多すぎる。たとえ僕が冷蔵庫の扉を閉め忘れていたにせよ、なかには一週間分の食料が入っていたんだ。あんな小さなネズミ一匹に全部食べつくせるはずがない。
 まさか泥棒でも入ったんじゃ…。僕は突然心配になって、急いでたんすの引出しにしまってあった財布を見にいった。だけど財布はそのままだったし、もちろん家の中をあらされた形跡もなかった。
 それによく考えたら、いまどき冷蔵庫の中身を盗む泥棒なんているわけがない。
 でも、それなら冷蔵庫の中身はどこへいってしまったんだろう。僕はいろいろ考えてみたけど、いくら考えても答えは出てこなかった。
 とにかく材料がないんじゃ料理のしようがない。しかたがないので、その晩は外で何か買って食べることにした。
 そしてこの事件のせいでなんとなくペースをみだされた僕は、勉強を早めにきりあげて眠りにつくことにした。

 その晩、僕はたくさんのネズミにおそわれる夢を見た。
 カリッ、カリリッ、カリッと不思議な音に気がつき僕は目を開けた。すると一匹の小さなネズミが本棚のはじをかじっているのが見える。なぜネズミがそんなところにいるのかはわからない。だけどネズミはよそ見をすることなく一生懸命本棚をかじっていた。
 そのうち別の場所でもカリカリという耳ざわりな音が聞こえてきた。見ると今度は机の足を別のネズミがかじっている。
 いや、机だけじゃない。よく見れば壁や床や天井など、あらゆる場所にネズミたちがいるじゃないか。
 はじめは一匹で本棚をかじっていたネズミも、僕がもう一度見た時には二匹になっていた。驚いたことにまたしばらくすると今度は四匹になって、さらに時間がたつと八匹になって、気がつくと部屋じゅうがネズミたちでいっぱいになっていた。
 ネズミたちはしきりに部屋のあちこちをかじっている。その音はすさまじく、まともに聞いていると頭がおかしくなりそうだった。まるで僕の耳のなかにもネズミが一匹いて、脳みそをかじっているみたいだ。
 もちろん僕はすぐにその場から逃げ出そうとした。だけど体が言う事を聞かない。まるで金縛りにでもあったみたいに、僕の体はベッドにはりついたまま、指一本動かすことができなかった。
 しかもそのときにはもう、ネズミたちは数え切れないほどにまで増えていた。
 ネズミたちのいきおいはとどまるところを知らず、やがて机や本棚をかじりつくしたネズミたちは、今度は僕にむかっておそいかかってきた。
 ネズミたちははじめに僕の足の爪先や手首をかじりはじめ、だんだんと上のほうへせまってきた。
 もちろん夢なので痛みは感じない。それでもあの恐怖感だけははっきりと覚えていて、いまでもはっきりとその光景を思い出すことができる。
 気がつくと僕の顔の上にはすでに何匹かのネズミがいて、僕の体のほとんどはネズミたちの腹のなかにおさまっていた。
 僕はそんな状態になっても、心の中ではまだ逃げようとしていた。だけどないはずの手足を動かせるはずもなく、僕はただネズミたちのされるがままになるしかなかったのだ。
 そしていよいよ頭をかじられそうになったとき、僕はやっと目がさめてベットから飛び起きた。
 僕はいまのが夢だったことがわかったとたんほっとして胸をなでおろした。体は嫌な汗でびっしょりだった。
 いままでネズミに体をかじられる夢なんか見たことない。それなのにどうして急に出てきたりしたんだろう。
 …何かがおかしい。僕はすぐにそう思った。


 あ、ゴメンナサイ。立ち読み部分はここで終わりなんです。ここまで読んで下さって有りがとうございます。
 このあともっと面白くなりますから買っていただけるとすごく嬉しいです。 

















 あとがき

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