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戦後ブラジル技術移住者の失敗と挫折。その放浪と流転の人生録
 良昭と掛山君も沿道の群集に混じって、エスコーラ・デ・サンバを見物していた。
押し合いへし合いの人波であり、騎馬警官が交通整理をしているが、すぐに人垣が崩れてしまう。 (中略)
 良昭のすぐ前に十五、六人の仮装をした少女達の一団が近づいてきた。皆サンバを踊りながら、安物の香水の入った水鉄砲を見物人めがけて発射し面白がっていた。
ふと気が付くと例の少女団の中に居た一人の少女が良昭のそばに居て、それからというもの良昭の行く所、ぴったり少女はついて来た。

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         中野義雄 著





 サンバの故郷 緑の大地





                                   明窓出版



















   推薦の言葉
●●●●●推薦の言葉の中身●●●●●

































 はじめに

 一九〇八年(明治四十一年)六月十八日、第一回移民船「笠戸丸」がブラジル・サントスに到着してから、今年(一九九八年)で九十年になります。現在ブラジルでは日伯官民挙げての「日本移民九十周年記念祭」が盛大に催され、二月には天皇・皇后両陛下がブラジルを訪問されて大歓迎を受けられました。
 第二次大戦中は一時、ブラジル移住は中断されましたが、戦前、戦後に亘って移住は続き、現在では日本人の血を受け継いだ日系人はブラジル全体で百二十万人を超えるに至りました。     後略

























       目 次


   第一章   第一回目ブラジル移住…………8
   第二章   西回り南米航路…………40
   第三章   ブラジルでの生活…………63
   第四章   南米周遊の旅…………95
   第五章   サンパウロからメキシコへ…………131
   第六章   日本へ帰国…………165
   第七章   アメリカ周遊旅行…………171
   第八章   カナダでの生活…………185
   第九章   再び日本へ戻る…………206
   第十章   東回り南米航路…………229
   第十一章  再びサンパウロにて…………235
   第十二章  南太平洋回りで日本へ…………239
   第十三章  再び東京にて…………246
   第十四章  三度目のブラジル――永住…………256
























第一章  第一回目ブラジル移住



 音楽との出会い
 良昭はジャズの中でもトランペットの音色に魅了された。とりわけハリー・ジェイムスのトランペットはあこがれの的で、「スリーピー・ラグーン」、「チリビリビン」、「ヴェニスの謝肉祭」等の名演奏は完全に良昭をノックアウトしてしまい、同じ人間でこれだけすばらしいトランペットが吹けるものかと深く嘆息したものだった。
 高校一年の時、アルバイトして念願のトランペットを手に入れた。サビだらけのおんぼろだが、うれしくて毎夜ふとんの中で抱いて寝たこともあった。特に先生について習うこともなく、全く無手勝流の独習ではあったが、なんとか吹ける様にはなっていた。
 そして東京のW大にはいってからは、当時六大学中でも有名だったW大のジャス・ビッグバンドに運よくレギュラーとして入団することができた。
 当初は三番トランペットのパートを吹いていたが、後にトランペットでは高音が出ないという限界を悟って、サックスに転向した。楽団のスケジュールは結構忙しく、演奏会やダンスパーティーに出演したり、また春夏冬の学期休みには、日本全国各地に演奏旅行に出かけたりして、いっぱしのミュージシャン気取りで、学業そっちのけで音楽三昧の生活を楽しんだ。大した腕前ではなく所詮素人芸の域を出なかったが、それでも時にはプロのバンドから臨時の穴埋めの仕事も来たから、「芸は身を助ける」、小遣いの足しになった。当時は世の中が甘かったのだ。
 こんな調子で、親元から離れた自由気ままな生活を楽しみながら、良昭は東京で四年間の学生生活を送った。

 東京での学生生活
 当然学業はおろそかになった。が、巷に言われる通り、「日本の大学は入るのは難しいが、一旦入ってしまえば、よほど要領が悪いか、なまけものでない限り、トコロ天式に卒業できる」ので、良昭も大して勉強もしなかったのに卒業できた。また四年間の在学中一度も落第することもなく、理工学部建築学科をBの上位の成績で無事卒業した。
 ただし卒業設計はパスはしたものの、未完成のひどいしろもので、われながら気が引けた。自分の不勉強とは言え、これから建築家として世に出ようという良昭にとって、一大痛恨事であった。
 外国語には早くから興味があったので、高校時代には京都日仏学館に通ってフランス語を習い、大学でも第二外国語はフランス語を選択した。必修科目の英語では、文学部英文科の教師が来て、イギリスの著名な作家サマセット・モームの短編小説を、教師に指名された学生が、一区切りの節を読んでは日本語に訳すという、いわゆる講読が主で、こんなことが二年間続けられたが、自分の不勉強を棚に上げて申し訳ないが、後年外国に出てから、これらの学校における英語の授業が、全く何の役にも立っていないことを切実に思い知らされた。全くの時間の浪費だったのである。日本の大学の語学教育のお粗末さを思いしらされた。

 音楽や映画、小説を通して外国の世界に目を開かされて行った良昭には、在学中から漠然と海外に行ってみたいという想いが去来していたが、具体的な考えも、これといった当てもなかった。また当時は現在と違って、簡単に海外渡航が出来る時代ではなかった。
 そうこうする内、大学四年の最終学年の夏休みも終わり、卒業設計も中盤を迎え秋風が立ち始める頃から、級友達も就職活動を始め、設計事務所や建設会社に内定するものも出てきた。
 学部卒業年度の昭和三十四年(一九五九年)当時、建設業界は不況のあおりを受け、学生にとっては就職は決して楽でなく、いわゆる売手市場ではなかった。大手一流、二流どころでは、縁故推薦がないと採用は難しいといわれていたが、良昭には会社就職用の、これといった縁故はなかったので、積極的に仕事探しはしなかったし、かといって海外に行く具体的な方策もなく、将来の方針を立てないまま、相変わらず漫然と日々を送っていた。
 それでも学校の就職課からは「T建設を推薦する」と言って来たが、なんとなく気乗りがせずことわった。
 しかしこのままでは、ただ学校をうまく、要領よく卒業したというだけで、建築の基礎的な知識も技術も不勉強のお陰で何ら身についておらず、よしんば海外に行くにしても、先行不安で、やはりここでもう少し勉強し直すか、もしくはしばらくどこかに勤めて実務を身につけるべきか、大きく迷っていた。いつまでも学生気分で音楽をやっているわけにもゆかないし、なんとかしなければと内心は焦り始めていた。     後略

 あ、ゴメンナサイ。立ち読み部分はここで終わりなんです。ここまで読んで下さって有りがとうございます。
 このあともっと面白くなりますから買っていただけるとすごく嬉しいです。 


















 あとがき

 ●●●●●あとがきの中身●●●●●
























 著者プロフィール


 中野義雄 (なかの よしお)

 一九三五年     京都市に生まれる
 一九五九年     早稲田大学建築科卒
 一九六二年     同大学院修士修了
 一九六三年     ブラジルへ移住者として渡航
  現在       ブラジル・サンパウロ市に在住
           海外での建設コンサルタント業務に従事
  現住所      RUA ITAMBE 367-124 HIGIENOPOLIS
           SAO POULO BRASIL






















本の誕生秘話

 ●●●●●本の誕生秘話の中身●●●●●























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  JECAのHPで見て取り寄せました。一気に読ませるバイタリテーを感じました。超インフレ大国ブラジルは、大企業でさえも経営は不安定です。働く人達は失業と転職を繰り返しながら力強く生きています。そうした国に建築技術者の良昭が、農業移住者として飛び込むこと自体が、放浪する運命を背負っています。めげずに明るく逞しく彼の大地に生きた、そのなかにブラジルを愛し、家族を愛する心が芽生え養われて行きます。本書はいつの間にか、ブラジルを故郷として生きて行く大地の力を感じます。良昭の心に、伝統・組織に埋もれて生きる日本的な人生生活から、組織の中で個に生きる現代的な国際的感覚の成長を感じました。それは日本の現代社会に最も必要なことです。以上   (千葉県 N)