未来へ告ぐ
前人未踏のITサスペンス。平成21年に本格稼動した、政府管理下の「基幹通信網」。
それは、あらゆるメディア通信に対応した「スーパーインターネット」を
ベースに政府主導で全国に敷設した大容量・超高速の光ファイバー網である。
基幹通信網によるネットワーク社会が日本に馴染みはじめた平成26年、その
信頼性を疑わせ、日本中を不安に陥れる大事件が発生した。
電子投票をめぐる黒い落とし穴……。政治記者吉川はIT犯罪を暴けるのか?!

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         光甫台出 著





  平成二十六年

 基幹通信網に異変あり





                                   明窓出版



















   推薦の言葉
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  まえがき

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       目 次




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 平成二十六年。二十一世紀に入って十三年が経ち、世の中はやや二十一世紀らしくなってきたところもあるが、街の様子などは昔とほとんど変わり映えしていない。ざっと見回すと、ビルや民家の屋根に太陽電池パネルが目立ち、相変わらず狭い道路に、電気自動車や燃料電池自動車、自動走行自動車が走っているぐらいが、少し近未来的になってきた部分だろうか。逆に、異常気象とも言える気候変動の増大も収まってはおらず、日本の季節感はますます薄まり、太平洋に浮かぶ小さな島々が海面上昇による水没の危機感にさらされるようになってきたのが、地球の時間が確実に進んでいることを実感させる。
 一方、われわれの日常生活は、先端技術の急速な進歩に歩調を合わせて、大きな変化を遂げてきた。さまざまなハイテク素材や環境素材が普及してきたことは身近に文明の進歩を感じさせるものの、やはり、最も顕著なものが、通信技術の発達によるネットワーク化社会である。今や、日本に暮らす赤ちゃん以外のほとんどの人が携帯端末とパーソナルカードを持ち、通信、情報の収集・発信はもちろんのこと、日常的な法律上の手続きや金銭の支払い・振込みなどの経済行為のほとんどがどこにいてもできるようになり、国政選挙の投票までもが端末からできるまでになった。
 例えば、店で買い物をする場合、代金の支払いは携帯端末かパーソナルカードのどちらかを店の固定端末に接続されているレセプターと呼ばれる情報検知器にかざして、銀行口座から引き落とすか、パーソナルカードに蓄積されているお金から支払うかする。もちろん、現金でも支払うことはできる。パーソナルカードにお金を蓄積してそれを使う方式は、銀行口座を持っていない子供などが小遣いやアルバイト料を受け取るときに利用されるぐらいである。パーソナルカードにお金を入れる場合、与える人と受け取る人は遠く離れていてもかまわない。遠くの大学に通っている子供に親が仕送りをするときは、家の固定端末か親の携帯端末と子供の携帯端末を接続し、子供の携帯端末にパーソナルカードを差し込んで、親の端末から仕送りのお金を振り込めば、瞬時に送ることができる。このような決済機能の普及は携帯端末よりパーソナルカードが先行したので、現在は両方が使われているが、最近は、金銭関係や医療関係の個人情報を蓄積するというパーソナルカードの機能をすべて持っている携帯端末が普及してきたため、パーソナルカードが消えて無くなるのは時間の問題と考えられている。
 また、住民票などの公的機関が発行する証明書のほとんどが、従来の紙に書かれた証明書とは異なる電子証明書の形式で携帯端末やパーソナルカードに受け取ることもできる。これも仕送り送金の例と同じく、遠隔地から受け取ることができる。この電子証明書は、それが入っている携帯端末やパーソナルカードを持っていけば、どこへでも正規の証明書として提示できるし、端末を経由して、どこへでも送付することができる。電子証明書の発行手続きでは、当人のパスワードなど、接続情報全体から請求者が正当な請求者か否かが判断されるので、他人になりすまして不正に受け取ることは難しくなっている。ただし、全く不可能なわけではない。正当な代理人による請求ということもあるので、システムの制度ですべての不正を除去するのは実際不可能であり、最後の防波堤が利用者のモラルとなる部分が残るのは、社会システムの宿命なのかもしれない。
 情報化社会の主役になりつつある携帯端末には、通信、情報の収集・発信機能以外に、所持者の所在位置を常に把握できる位置監視機能がある。この機能については、特定の人の位置を知り得る権利者は当然、申請時に指定のあった人に限定されてはいるが、被監視者のプライバシー保護の観点から、十五才以上の者については本人の同意が必要となっており、個人利用の携帯端末では、大人はあまりこの機能を利用していない。利用者のほとんどは子供と老人で、迷子や行方不明の防止にはそこそこ役立っているようである。一方、ビジネスシーンでは、この位置監視機能は多方面で大いに利用されており、経済活動の効率化に貢献している。ちなみに、携帯端末には、腕時計型、従来の携帯電話に似た形の電話型、薄っぺらなシステム手帳のようなタイプのモバイル型の三種類がある。ビジネスなどでキーボードをよく使う場合はモバイル型、短いメールを利用する人は携帯電話型、電話中心の人は腕時計型、というような分類で通っている。腕時計型でも音声で文字入力する機能がほぼ装備されてはいるが、出先で、声を出して文字入力するというのはあまり現実的ではない。
 この高度なネットワーク社会を支えているのが、五年前の平成二十一年に本格稼動した、政府管理下の「基幹通信網」である。基幹通信網は、従来のインターネットの特徴を継承しつつ、セキュリティ機能を大幅に強化し、あらゆるメディアの通信に対応した「スーパーインターネット」という通信仕様をベースにしたもので、全国の主要都市十八ヶ所に中継センターを置き、それらを政府主導で全国に敷設した大容量・超高速の光ファイバー網で、文字通り、網の目のように結んでいる。各家庭や企業とそれぞれの中継センターはいくつかのルーター(中継機)を介して加入者系光ファイバー網で接続されている。ルーターは完全自動化された中継局と考えればよい。また、個々のルーターは地理的にも均等に配置されており、携帯端末の無線通信局の役割をも兼ねている。アンテナ網も公共施設や公共構造物を中心に全国の隅々まで張り巡らされ、従来の携帯電話網とは別の無線通信網を構築している。
 あらゆる情報通信を統合するという理念から、テレビ電話もデジタルテレビ放送も低価格な統一料金制度の元で基幹通信網の上に実現されている。五年前の稼動当初は電話もテレビ放送も、さらには、本来の情報通信の分野でさえも、従来の電話、テレビ放送、インターネット通信の補完的な役割の位置付けしか得られなかったが、徐々に、ネット犯罪の減らない旧来のインターネットに比べての格段のセキュリティの高さや高速性が実感され始め、また、さまざまな行政サービスや経済活動の電子化が進み、基幹通信網上のサービスレベルが加速度的に向上するにつれて、必然的に、主役と脇役の立場が逆転し始めた。今やほとんどの旧インターネット網が基幹通信網と相互接続し、基幹通信網のサービスの互換サービスを作り出して、生き残りに必死の状態である。ただ、このスーパーインターネットを国家レベルで実現、運用しているのは、現在、ドイツと日本だけであり、国際的な通信網としては既存のインターネットの寿命はしばらくの間は約束されているようである。付け加えていえば、社会の危機管理という面では、社会システムの多元化が望ましいという意味から、政府もこれら旧来の電話、テレビ放送、インターネット網をそれなりに保護していくという方針を表明している。
 ここで、政府管理下のシステムという、時代に逆行するような在り方が日本社会のメインシステムに納まった経緯を説明しておこう。
 そもそも、日本全国の高速通信網のインフラ整備は二十世紀末ごろに、「IT革命」という言葉が歩き回る前から始まっており、全国に光ファイバー網の敷設を政府事業として始めたが、そのころ既に、一部の民間通信会社が独自に、主要都市を結ぶような、かなり広範囲な光ファイバー網を持っていた。このような状況から、政府事業の必要性・有効性に疑問を向ける専門筋もあって、政府事業も何やら盛り上がりに欠けるものがあった。が、事業は滞りなく進んでいった。そうこうして、平成十七年、ドイツが世界に先駆けて仕様が規定されて間がないスーパーインターネット網を構築するプロジェクトを開始したのに刺激を受けたのか、専門家達の焚き付けもあって、政府も主導権の挽回を図り、財政赤字の増加も何のその、日本にスーパーインターネット網を構築することを決定した。それは、ヤケクソかとも思えるような政策であった。というのも、スーパーインターネット網の構築はインフラを整えて、後は野放しというわけにはいかない。スーパーインターネットの高度なセキュリティ機能を生かすにはセキュリティ監査システムも一体として構築しなければならず、その監査システムも一貫した制度の元で一元的に運用しなければならない。導入するハード、ソフトともインターネット用の標準的な安価なものは使用できず、専用の割高なものを大量に導入しなければならない。つまり、国家レベルのスーパーインターネット網の構築には莫大な費用が掛かるのである。
 インターネット先進国であるアメリカがスーパーインターネット化に遅れをとったのは、近年、米国内の経済が低迷していることもあって、この構築費用の問題と、アメリカでは世界で一番広範囲に旧インターネットが普及していたが故に、逆に、新たにスーパーインターネット網を構築するのにはさまざまな障害があったという事情があった。それでも、アメリカも現在では、いくつかの大都市で既存のインターネット網をスーパーインターネット化しており、日本やドイツと異なり、徐々に転換していくことにした。監査システムも複数に分割して、非営利の民間団体が運営している。
 かくして、我が国のIT事業の第二段階として「基幹通信網構築事業」が総務省の統括で遂行され、平成二十年仮運用、平成二十一年本格運用と進んでいった。運用当初は、莫大な費用を費やして造られたことや、システム全体が当局の管理下にあることなどから、批判的な目で見られて、既に述べた通り、冷や飯食いであったが、徐々にスーパーインターネットのメリットが日本社会に認識され、受け入られていった。失政が多いといわれていた政府・政策当局のこのヤケクソとも思える政策は、増えた財政赤字の件は別にして、久々のヒット政策と誉めるべきなのだろうか。
 そんな中、基幹通信網によるネットワーク社会が日本に馴染みはじめた平成二十六年、基幹通信網の信頼性を疑わせ、日本中を不安に陥れた大事件が発生したのである。この事件を掘り起こしたのは、平成新聞社のベテラン政治記者、吉川敬二であった。政治記者としての鋭い嗅覚で事件の端緒を嗅ぎ分けたのである。

   あ、ゴメンナサイ。立ち読み部分はここで終わりなんです。ここまで読んで下さって有りがとうございます。
 このあともっと面白くなりますから買っていただけるとすごく嬉しいです。 




















 あとがき

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