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 衝撃の発刊 ついになる!!
三峡ダムが完成すれば、優に東京から神戸までの長さに匹敵する巨大貯水池が出現することになる。
 中国政府の発表では、そのため、170万人〜180万人もの住民立ち退きが必要であるとされる。世界的に眺めてみても、一つのダムでこれだけ多くの住民を立ち退かせた例はない。このような大量の立ち退き者の移住地を確保することは、はたして可能なのであろうか。
 また、長江は、世界で4番目に土砂含有量の多い河川である。そのため、貯水池に堆積する土砂問題をどう解決するかは、ダムの寿命を左右し、洪水防止能力、発電能力にも影響を及ぼす。堆砂問題は、まさに「このプロジェクトの癌」なのである。この問題の解決に失敗すれば、建設後二年で埋まってしまった黄河の三門峡ダム貯水池の二の舞いになりかねない。
時代に鋭く警鐘を発し続ける鷲見一夫(新潟大学教授)の最新告発本

前書き 目次

本文70% あとがき 感想BBS 本の誕生秘話













 
         鷲見一夫 著





 三峡ダムと住民移転問題


 100万人以上の住民を立ち退かせることができるのか?




                                   明窓出版



















   推薦の言葉
●●●●●推薦の言葉の中身●●●●●

































  はじめに


 三峡ダムは、世界第三の大河である長江(揚子江)を堰き止めて、高さ一八五メートル\通常水位は、一七五メートル\、長さ一九八三メートルのコンクリート重力式ダムを建設しようとする構想で、これが完成すれば、世界最大の発電能力を備えたダムとなる。(1) この発電とともに、洪水防止と航路改善が、ダム建設の主要目的とされている。
 工期は、一七年間が予定されており、二〇〇九年の完成が目指されている。ダム建設工事は、三期に分けて実施される。つまり、第一期工事(一九九三〜一九九七年)、第二期工事(一九九八〜二〇〇二年)、第三期工事(二〇〇三〜二〇〇九年)の段取りで行われることが計画されている。(2)
 こうした計画の下に、ダム建設は、一九九四年一二月一四日に着工された。一九九七年一一月八日には、香港返還に合わせて、「二大慶事」の一つとして、本流締め切りが行われ、一九九八年から第二期工事に入っている。二〇〇三年六月一日からは、第三期工事に移行することが予定されている。
 ダム・サイトは、宜昌の上流四〇キロメートルに位置する三斗坪である。バックウオーター(逆流水)は、約六六〇キロメートルもさかのぼり、重慶にまで達する。これにより、東京から神戸までの長さに及ぶ巨大貯水池が出現することになる。
 そのため、中国政府の発表では、一一三万人もの住民立ち退きが必要であるとされる。世界的に眺めてみても、一つのダムで、これだけ多くの住民を立ち退かせた例はない。このような大量の立ち退き者の移住地を確保することは、はたして可能なのであろうか?
 しかも、問題は、それだけに止まらない。というのは、洪水期に一八五メートルの高さにまで貯水することになれば、さらにおよそ二〇万人の住民の一時立ち退きが必要であるからである。また、水没線以上の居住者であっても、道路、移住地、農地、工業団地などの造成のために移転を迫られるケースもある。これに加えて、貯水池での土砂堆積による水位上昇のために、

























            目   次


はじめに………………1
プロローグ\「人権」無視の住民移転………………16

第1章 中国におけるダム建設と住民移転
 1 ダム建設の光と影………………43
 2 ダム建設と住民移転………………59

第2章 三峡ダム建設と「言論の自由」
 1 三峡ダム建設を思い止どまった毛沢東………………89
 2 小平と全国政協………………100
 3 天安門事件と戴晴の逮捕………………107
 4 全人代での異例の採択………………111
 5 三峡プロジェクトの着工と言論統制………………118

第3章 三峡ダムと住民移転
 1 曖昧にされたままの移住者実数………………124
 2 移住者の生活再建は可能か?………………130

第4章 「開発型移住」と「人権」保障問題
 1 ダム建設と立ち退き補償………………146
 2 「長江三峡工程建設移民条例」………………153

第5章 住民移転と土地・環境容量
 1 水没地域の自然的・社会的条件………………175
 2 住民移転・再定住条件の地域的難易度の差異………………184
 3 主要水没地域のケース・スタディ………………193

第6章 「開発型移住」政策の実行
 1 「開発型移住」の概念………………228
 2 移住実験………………237
 3 第一期移民………………246
 4 「一線水位」による住民移転………………259
第7章 「開発型移住」政策の破綻
 1 第二期移民………………272
 2 顕在化した「開発型移住」政策の矛盾………………282
 3 デッドロックに乗り上げた「開発型移住」政策………………304
 4 住民移転政策の転換………………319
 5 高まる住民不満………………334

第8章 三峡プロジェクトと「腐敗」問題
 1 「職務犯罪」の多様化と大型化………………346
 2 三峡プロジェクトをめぐる「構造汚職」………………376
 3 「構造汚職」の実態………………399
 4 「豆腐渣工程」の実例………………405
 5 住民移転と「汚職」問題………………412
 6 横行する不法行為………………423

第9章 住民移転問題の行方
 1 「脱貧成果」?………………436
 2 「外遷」は、問題解決策となり得るか?………………448
 3 「外遷」実験………………453
 4 第二期「外遷」………………465
 5 「外遷」政策は、成功したのか? ………………478

エピローグ\高まる社会不安………………489

あとがき………………518

索引
 事項索引………………
 人名索引………………

































  建設目的を失った三峡ダム


 三峡ダムの主要目的は、洪水防止、発電、航路改善とされてきた。これらの目的のうち、三峡ダムの「推進派」が、「全国人民代表大会」(以下、「全人代」)において「長江三峡プロジェクト建設決議」の採択(一九九二年四月三日)を勝ち得るのに巧妙に利用したのは、洪水防止の効用であった。国務院副総理の鄒家華は、一九九一年五月二九日〜六月五日に、国務院三峡工程審査委員会のメンバーを帯同して、長江沿岸の洪水準備状況を視察した際に、「三峡工程的首要任務是防洪」(三峡プロジェクトの主要任務は、洪水防止である)と語った。(1)
 しかし、三峡ダムが洪水防止のための有効な方策になり得ないことは、中国国内でも、多くの専門家によって指摘されてきた。例えば、陸欽侃は(2)、「三峡プロジェクトの洪水防止機能は限られている」と述べて、その建設に反対する立場を採った。彼によれば、長江の洪水には、三つのタイプがある。一つのタイプは、一九五四年に発生した長江の全流域にわたる大洪水で、この場合には、三峡ダムは、精々のところ上流域の「川江」(3)の洪水の一部をコントロールすることしかできず、また中・下流域の湘水、資水、漢江などの支流に起因する洪水をコントロールすることはできない。二つ目のタイプは、一九八一年の洪水のように、上流域では大氾濫を引き起こしたが、中・下流域ではそうではなかったケースで、このような洪水には、三峡ダムの存在意義はなく、かえってバックウオーター部分での土砂堆積により重慶での洪水被害を高めてしまう。三つ目のタイプは、中・下流域では大洪水が発生したが、上流域ではそうではなかったケースで、この場合には、三峡ダムは、何らの効果も持たない。(4)
 同様に、長年にわたって、三峡ダムの建設に反対してきた李鋭も(5)、北京での筆者らとのインタビューにおいて、次のように語った。
「水害問題に真に対処するためには、堤防を強化したり、河道の障害物を除去して水通しを良くしたり、川床の浚渫をしたり、遊水池を合理的に利用するなど、様々な方法を講ずるべきです。ダム建設は、最後に考えるべき方法です。
 現在、長江水利委員会が行っていることは、ダムを造って、遊水池を干拓して田畑にするという最悪の方法です。遊水池は、その機能を維持すべきです。そこでは、魚の養殖などの利用法を図るべきで、田畑に変えてしまうのは避けるべきです。
 さらに言えば、これまでに干拓して農地に変えてしまった場所を遊水池に戻すべきです。特に~江大堤の北側の氾濫地帯の農地は遊水池に戻して、その機能を復活させるべきです。」(6)
 このような陸欽侃、李鋭らの意見を無視して、長江水利委員会は(7)、三峡ダムの建設が洪水防止になり得るとの安全神話を流し続けてきた。そして、この安全神話を信頼して、多くの人々が、長江の氾濫原に住み着き、遊水池を干拓して、田畑に変えてきた。その結末が、一九九八年六〜九月に発生した大洪水による大規模被災であった。
 中国政府の発表によれば、一九九八年八月二二日の時点までにおいて、長江流域を含めて、中国全土において三億一八〇〇畝の土地が冠水し、二億二三〇〇万人が被災し、死者は三〇〇四人にのぼり、経済損失は一六六六億元(約三兆円)にも達した。死亡者数は、長江流域が最も多く、一三二〇人にものぼった。(8)
 魏沂は、この大洪水を「天譴」(天罰)と評し、これにより三峡プロジェクトを考え直す好機が与えられたと述べた。(9)同様な観点から、王維洛もまた、長江水利委員会による従来の治水対策の誤りが、洪水被害を拡大させたと批判して、次のように述べた。
「長江水利委員会は、三峡プロジェクトを軌道に乗せるために、たとえ洪水問題へのその他の解決方法とか選択の余地とかがあるにしても、三峡プロジェクトの着手にとって不利となるような措置は講じてこなかった。こうした理由のために、長江水利委員会は、一九六〇年代と一九七〇年代には、分洪区の無人地域に大量の移民が入植することを許容して、その地域を農業区と人口居住区に変えてきたのであって、その結果これらの地区の住民が困窮に陥るのを不可避的にしてきたのである。」(10)
 しかし、長江水利委員会を中心とする三峡ダム「推進派」は、こうした批判の声に耳を傾けようとしなかった。それどころか、一九九八年の洪水被害を逆手に取って、三峡ダムの建設を急がなければならないと主張した。例えば、長江三峡工程開発総公司の(11)総経理陸佑は、(12)「長江における今年の特大的な洪水は、三峡プロジェクトの建設が十分に必要なことを、今一度証明した」と述べた。(13)
 しかも、始末が悪いことには、中国政府は、ダム建設「批判派」の主張への妥協策として、氾濫原に住み着いている人々を強制移住させると言い出したのである。つまり、中国政府は、一九九九年一一月に、二〇億元を投入して、「鄂」(湖北省)、「湘」(湖南省)、「」(江西省)、「」(安徽省)の四省の氾濫原に居住する一〇〇万人の人々を移転させるという方針を打ち出したのである。(14) その後、四省での移転対象者数は、六三万戸余り、約二四五万人に増加された。それに伴って、移転対策費も、一〇一億元に増やされた。(15)
 これは、長江沿岸の住民にとっては、最悪の政策選定である。なぜなら、これまでは氾濫原への入植を奨励しておきながら、今度は立ち退けというのであるからである。こうした方針転換の一環として、湖南省政府は、洞庭湖において「退田還湖」(田畑を湖に戻す)措置を講ずるとの治水戦略を打ち出し、そのために約五万世帯(約一九万人)を「外遷」させることを決定した。そして、一九九九年末までに、約三万九〇〇〇世帯(約一四万八〇〇〇人)が移転させられた。(16)
 水利部部長の汪恕誠によれば、二〇〇一年末までの時点において、「退田還湖」措置により、洞庭湖区では、一二万戸、四三万人が移転させられ、また陽湖区では、一四万戸、五五万人が移転させられた。これにより、それぞれの湖の蓄水能力は、前者では三〇億立方メートル、後者では五〇億立方メートルも増加したとされた。(17)
 長江の遊水機能を回復するためには、これらの措置は必要不可欠である。そのために、二四五万人の入植住民の立ち退きは、ある意味では仕方のないことであるとも言える。しかし、ここで留意する必要があるのは、李鋭が、このような措置の必要性を強調していたのは、三峡ダムの建設に対する代替策としてであった。しかし、三峡ダムの「建設派」には、このような発想はない。その結果、洪水防止機能のほとんどない三峡ダム建設のために、さらに一〇〇万人以上の人々が立ち退きを強制されるのである。  あ、ゴメンナサイ。立ち読み部分はここで終わりなんです。ここまで読んで下さって有りがとうございます。
 このあともっと面白くなりますから買っていただけるとすごく嬉しいです。 























 あとがき

 
 あとがき

 三峡ダムは、社会主義官僚体制の弊害を象徴するプロジェクトである。社会主義は、資本主義の欠陥、特に弱肉強食の弊害を是正するという点では、その理念としては資本主義よりも優れていると言える。しかし、この概念が誤用される場合には、またこれが、官僚制度の弊害と重ね合わさる場合には、その弊害が際立ってくることになる。
 社会主義の方が資本、人材などの国家的資源を集中的に動員し易いため、大規模プロジェクトを実施するのに有利であるというのが、中国共産党指導層の口癖である。李鵬に言わせれば、三峡ダム建設は、「社会主義制度的優越性」を示す国家的事業なのである。こうした観点から、李鵬は、一九九七年の長江本流の締め切りを前にして、「本流締め切りでの勝利の達成は、重大な政治的・経済的意義を有しており、一つには人心を鼓舞する大事業であり、もう一つには社会主義建設の輝かしい成果を示す大事業である」と強調した。(1) 江沢民もまた、長江本流の締め切りの式典での演説において、「社会主義が、大事業の実行に際して力量を集中できるという優越性を備えている」ことを実証する壮挙であると語った。(2)
 しかし、この巨大プロジェクトの経済的、社会的、文化的、環境的影響が正しく判断されない場合には、そのマイナス影響は、とてつもなく大きくなる。三峡ダム建設の本質が、これらの影響の合理的な比較較量よりも、むしろ李鵬個人の「好大喜功症候群」に基づくのであれば、その弊害は、後々にまで及ぶことになる。 後略
























著者略歴



一九三八年、愛知県に生まれる。一九六五年、横浜市立大学文理学部国際関係課程卒業。一九七〇年、一橋大学大学院法学研究科博士課程修了。その後、横浜市立大学専任講師、助教授、教授を経て、一九九二年より新潟大学法学部教授。専門は、国際環境法。
〔主要著書〕『ODA援助の現実』(岩波新書、一九八九年)、『きらわれる援助\世銀・日本の援助とナルマダ・ダム』(築地書館、一九九〇年)、『ノー・モアODAばらまき援助』(宝島社、一九九二年)、『世界銀行\開発金融と環境・人権問題』(有斐閣、一九九四年)、『世界貿易機関(WTO)を斬る\誰のための「自由貿易」か』(明窓出版、一九九六年)、『三峡ダムと日本』(築地書館、一九九七年)など。
〔主要翻訳書〕パトリック・マッカリー著『沈黙の川\ダムと人権・環境問題』(築地書館、一九九八年)など。

胡(Hu Weiting)

一九六二年、中国に生まれる。法学博士。新潟大学現代社会文化研究科外国人客員研究員。
〔主要論文〕「開発と環境問題\日本の経済発展の経験とその中国にとっての教訓」(修士論文、一九九五年)、「三峡プロジェクトにおける住民移住問題」(博士論文、一九九八年)、『前途多難な三峡ダム建設』(共著)(『法学セミナー』、一九九八年一二月号)など。
〔主要翻訳書〕戴晴編『三峡ダム\建設の是非をめぐっての論争』(共訳)(築地書館、一九九六年)。






















本の誕生秘話

 以前、ある講演で「どうして郵貯はいけないのか」の著者の講演を聴いた。正直その演題はそれほど心に残らず、つぎにマイクを握った鷲見一夫横浜大学法学部教授の話に引き込まれた。終わるのを待ちかねて自己紹介の後、原稿依頼をし、1年後には「世界貿易機関(WTO)を斬る」を出版した。今度はその鷲見先生(その時は新潟大学の教授を奉職なさっていた)のほうから電話で「三峡問題は知っているよね」と畳み込まれた。勿論知ってはいたが、マスコミからの知識のみのうすっぺらな知識ゆえ、しどろもどろの応対だったと思う。「現地にも行って来たし、中国で発禁になった三峡問題の本を日本語に翻訳した中国人著者との共著だ。これが出るとすごいことになるよー」聞いているうちに身体が熱くなったのを憶えている。
 中味に魅せられた私の考えたタイトル(だらしがないけど忘れた)に「そこまで言ったら共著者の胡さんが帰国出来なくなるよ」と一蹴された。「ま、それにしてもこれほど大きな問題を抱えた以上、いつ暴動が起きるか予断を許さないことになった。この問題を少し踏み込んで知りたいという読者にとっては現在この本しか知るすべがないからね。三峡問題に限らず、これからのダムについてのバイブル的な存在になるだろう」
 先生の紹介で共著者の胡さんにも会った。穏やかないかにもインテリ然とした女性だった。この人があんな過激なことを……と思った。発刊前の反響は、先生の預言どおり、大学生や、大学生協の書店から大きく返ってきた。「活字離れが云々されているけど、そんなことはないなー。国際問題にしろ時代を知るために、読む人はちゃんと読んでいるんだなー。そういえば『世界貿易機関(WTO)を斬る』も増刷になったことだし……」との思いを強くしたものである。























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