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かのヘンリーミラーの絶賛を受けた
日本唯一の“巨人” 上野霄里(しょうり)

世界、芸術思想界が注目の、日本の山里に隠れ棲む“世界的作家”「上野霄里」の、仰天詩歌論。
一語、一語が、活性を持ち、輝き、力強い。それは、毎日の生活の行動のなかで、実行ずみであるからである、と著者の上野は言います。 また、口先だけを嫌い、空論を罵倒する。
口先、空論こそが文明人の常套手段であり、まがい物の常識や、人の道や、おもいやり等の、腐臭を放つ道徳意識を生み、そういう、自然から見放されかけている現代文明の吐く息でさえもが、ダイオキシン以前に、魂を真っ黒に汚し、環境を汚染しているのだと語っています。

前書き 目次 本文70% あとがき

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Copyright (C) 2007 明窓出版, All rights reserved


















序文
「言葉を整理しよう」 生きるという行為は、暮らしていればそれで良いという訳にはいかない。文明の中に生まれていながら、その実、自然児としての要素を限りなく持っている人間は、文明の約束(道徳)の中に埋没しているだけでは生きられない。文化の知は、本当にごく一部であって、大部分は、自然の知、つまり叡智に依って成り立っている。生まれて育ち、働き、老化していく過程は、道徳の手に依るより、はるかに、自然の導き、つまり倫理に負うところが大きい。私はこの作品の中で一過性としての約束ごとであって、時代や状況の変化する中で、当然、その必要性に迫られて変えられていく道徳は、それとして、不変の構造を持った倫理に人間はもう一度帰らなければならないと主張したかった。
倫理という言葉を前に出して、しかもその意味も正しくは理解せず古臭い道徳を売り物にして騒いでいる妙な新興宗教や結社もあるが、人間は本来、徒党を組むことを避け、確かな自分を自然のリズムの中で認識することが生きる行為の芯になっていた。現代の知識人や常識の甕の中にべったりと漬けられている社会人間の道徳感は、まさしく倫理を道徳と同じものと納得して些かも恥じることがない。この事に気付く時、その人間は自然のリズムの中で物事の正しい力学を知ることが出来る。この力学を倫理という。むしろ道徳と対立し、全く反対の方向に向かうものなのである。この認識に言葉が介入してくる。言葉、特に詩の形をとった言葉(言霊)こそ、このような自然体の生き方を不動のものとする。 後略

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星の歌/目次

序 文・言葉を整理しよう

第一章星の歌 ── 宮沢賢治考 ──………………………17

花牧遊女18
宗教風の恋― 妹トシの死 \22
イギリス海岸にて31
さぁおあだりゃんせ\ 賢治の詩の世界\50
宗教的未完の賢治65
星にして下さい! \ 賢治の詩の前提としての童話の分析 ―78
輝く四次元の芸術― 賢治の周辺 ―103
賢治ノート111

第二章今日、詩人の存在は奇蹟であるか?…………117

先を行く二つの型118
言葉をさがす118
詩人の道は鎖されている119
言葉に就いて120
ゾンマーフェルトの軌跡127
文化言語系エングラムの喪失として129
誤 解130
言葉の死131
サヴォナローラが出現するまで188
砂嘴のアレゴリイ135
燃えている137
言葉の屑だけ138
いくつかの定義めいたもの139
上層芸術・下層芸術140
二つの詩141
魅せられたもの142
Mo不e et le serpent143
憶良を殺す詩145
言葉の再生としてのアナグラム151
Cre-do- quia absurdum!
Po師 il est l'antagoniste terriblr!152
En d罫e154
「一」と「全」155
自分の声157
耐え難い時代の中で158
無力は美徳ではない159
古譚にみる源流160
奴隷の定義161
引 用162
リケッチア?クラミジア?163
実 像164
立ち返りの論理164
伝説のように165
狂 死167
生命の木168
絶対的自我の中に咲く花170
謳歌と詠嘆170

第三章奇蹟のかけら…………………………………………173

出わかれの心─― 人生哲学としての俳句をめぐる、
放哉と山頭火にみる脱俗の構造──174
漂白の地としてー『 みちのくのうたまくら』をメデウムとして―200
永遠の 流離者・石川啄木207
昭和を敗北的にうたう男 ―村上昭夫の場合 ―228
失農村の詩 ― 農民詩人・北川広夫の作品をめぐって ―247
千ミリレンズLens 1000mm/F6255
詠嘆詩としての効用と限界
―北川広夫の『真夏に吹雪は吹き荒れて』及び『宇宙の孤独』寸感―279
試論「地方芸術解体」ー芸術復興のために─285
広大な荒廃291
個人と集団293
名言と美文296
影響と模倣297
自我にめざめる301
詩人のゆううつ304
地上二メートル以下の表面306
憧れと抵抗311
定 型315
虚無詩の終焉320
精神の超絶性としての詩論337
上部構造・下部構造342
離脱の芸術349

第四章未来の友に告ぐ……………………………………365
アダムの時366
意味付けの不当性366
ロートレアモンの言葉369
「拒否」そのものとして在る詩人370
集団の外側273
メタフィジカル374
挑戦の真心375
ベケットの方向377
剣の道のアレゴリィとして380
発生観386
アンリ・ミショーをメデアムとして388
錆ついた扉39/
反逆者又は失認症患者393
重さは詩である395
批評すべきではない396
未来の友に告ぐ396
反要素の定義399
脱皮又は人間らしさの皮をむしりとること400
覚 悟401
一過性のめまい402
孤 立403
パンがなければ恋で生きよう403
怒りの所在に就いて404
言葉の土壌406
越境の老女406
童話の背後に407
夢188
わたしは文明の最大の敵┃半文明と純文明┃408

後書き幕末の志士達のように…………………………………………………418

カバー絵/野本希望・陶芸家
カバーデザイン/藤井忠勝


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実存の生き方をする人間が行う「放棄」の
状態は、いわば神秘的な叡智の 戯 画 である。
《ゼードルマイヤー》
1章星の歌─ 宮沢賢治考 ─


花巻遊女
花巻は、古く稗貫と呼ばれ、『旧蹟遺聞』には花牧とある。花牧は江戸期に、奥州路に名高い遊女の里であったことが『西鶴一目玉鉾』に書かれてある。それは丁度、東海道における三島宿のような存在であったものか。三島の女郎衆とはいうが花牧女郎衆とはいわない。第一語呂が悪いし、そういったイメージではない。花牧遊女というならぴんとくる。古書には「ここも旅人のために遊女を定め置きぬ。その役目とて三味線引いて小唄も所からにはよしや」と記してそぞろ当時の風情をほうふつとさせてくれる。和歌にある「陸奥のおふちの駒も野かふには荒こそまされなつくものかは」というのは、花牧の馬のことをうたったものである。岩手山の郷土史には、

「花巻といふは、むかし、此の辺に花の牧と称して、名馬を産する牧場あり里人そ
の馬を牽き、出羽の尾花沢に至りて繋ぎしにより、花牧と名付けしといふ。」

とあり、又、

「むかし北上川筋は、瀬川元館の辺より西に折れて、愛宕の下、瑞興寺の北を過ぎ、城下
を廻りて南に流れ、水深く渦巻をなし、暮春落花の候、百花繽紛飛びて水上に浮び、頗
る美観なるを以て、花巻と號けしともいふ。」
いずれにしても、わたしには、花牧の遊女の比喩としてこれらが語られているようにおもえて仕方がない。一寸のことでは人になつくことのない花牧の荒馬とは、身を売っても心は仲々許そうとしないけなげな遊女のことのようにおもえる。渦巻く流水に舞う花びらの哀れも、彼女達の悲しみに満ちた生涯を物語っているようだ。
いつの頃かどこかで耳にした花巻芸者にだまされて財産をつぶしてしまった男の話、妻子のある男と知りながら、身も心も献げて、その果てに入水自殺した芸者の話――わたしには、花巻が、遊女の町として美しく心のひだに焼付いているのを感じる。わたしは北海道や盛岡に行くために何度、この街並を通っていったことであろう。ロマンチックな街だ。岩手の県北とちがって、人情味も豊かでおだやかであるこの辺りには、こういった悲しいエピソードがあっても、決して不自然には感じない。そういった遊女の里にふさわしく、花巻というその可憐な地名にふさわしく、この地方で使われる方言には一種独特のまろやかさがある。宮沢賢治も、その事実を意識してか、ふんだんに詩の中に花巻の方言を採り入れている。関東以南の者には、外国語のようにきこえるかもしれない。だが五年も東北のどこかに住みついていれば、自然と鮮明な意味を伴ってきこえてくる音楽のように美しいリズムである。「が行」はフランス語のn、と近いすべて鼻音の「が」、又は中学校の「が」であって、有声音の「が」、害虫の「が」で発音されない。

◇ちょっとお訊ぎ申しあんす一寸お訊きしたいんですが
◇盛岡行ぎ汽車なん時だべす盛岡行きの汽車は何時ですか
◇三時だったべが三時だったとおもいますが
◇燕麦播ぎすか燕麦を播いているんですね
◇あんいま向でやってらそうですむこうでやってますよ
◇ずいぶん気持のいい処だもな本当に気持のいい処ですね
◇ふうはい
◇あの鳥何て云うす此処らでぶどしぎあの鳥は何というんですこの辺ではぶどしぎ
と言うのですよ
◇ちらけろちらけろ四十雀むこうへ行けむこうへ行け四十雀
◇ぶどしぎて云うのかぶどしぎっていうんですか
◇あん曇るづどよぐ出はらそうです曇った日にはよくあらわれるん
ですよ
◇三時の次あ何時だべす三時の次は何時になりますか
◇五時だべがゆぐ知らない五時だったとおもいますがよく分かりません
◇降ってげだごとなさずい分降ってきましたね
◇なあにすぐ晴れらんすなあにすぐに晴れてきますよ
◇おらもあだっていがべが私にもあたらせてくれませんか
◇いですさあおあだりゃんせいいですよさあおあたりなさい
◇汽車三時すか汽車は三時のですか
◇あめゆじゅとてちてけんじゃみぞれ雪をとってきてくれない
◇生まれでくるたてこんどはこたに生まれてくるとして今度はこんなに
◇わりゃのことばかりで自分のことだけに
◇苦しまなえように生まれてくる苦しまないように生まれてきます
◇うないいおなごだもないい女ですね

こういった一連の方言に、花巻の人独特のイントネーションとアクセントがつく。一般に花巻の南に広がる伊達領で話される方言より南部領で話される方言の方がおっとりとしている。語り口がおだやかである。気仙地方や磐井地方(どちらも岩手県の南部の地域、伊達領の北辺の地)を旅行した花巻の男は、珍しいきのこの名をきいても、道をきいても、冷ややかにつっぱねられて、人情の冷たさにゾッとしている。しかし、これも早合点であって、言葉に艶がなく荒々しいからといって、それを根拠に人間の気性について類推するのは行きすぎというものだ。いずれにしても、南部方言の丸味とやさしさは確かである。
そういった反面、権力欲と支配欲に振り廻わされた男達の醜い争いの歴史も、はっきりとその足跡をとどめている。和賀氏の流れを汲んでいた稗貫氏がここに鳥谷崎城を構えていたが、やがて天正年間に豊臣の圧力によって追放され、南部領となった。鳥谷崎城は別名花巻城といって、これが地名の由来だという人もいる。豊沢川、その他の川の北上川に合流するこの辺りが、川口と呼ばれていたともいわれている。
わたしは秋の一日、花巻を逍遙した。秋の澄んだ陽射しは汗ばむくらい暑いのだが、曇ったりすれば風が冷たく、朝晩の冷え込みは、陽光にさらされても、まだ地面に名残りをとどめ、踏みしめて歩く落葉の色付きがそのことをよく物語っている。国道四号線から右手、つまり北上川寄りの方に、すべて宮沢賢治の由所の地がある。賢治の森、イギリス海岸、羅須地人協会となった家の現所在地と、順に南から北に上っていく。

あ、ゴメンナサイ。立ち読み部分はここで終わりなんです。ここまで読んで下さって有りがとうございます。
このあともっと面白くなりますから買っていただけるとすごく嬉しいです。


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後書き


「幕末の志士達のように」

私は此処で再度、文明批評の作品を世に問う。しかし、これは、『星の歌』という題名の下に始めから終りまで順序正しく書き下ろした作品ではない。書かれた年代はばらばらであり、それぞれの時代の中で、文化の荒波に翻弄された私の生き方が、そのまま作品の全域に、それなりの怒りとなり、痛み、悲しみ、喜びとなって表れている。
詩論とはいっても、たまたま、詩人達の唯事ではない生き方や、詩集の中の生き生きした語や句と深く関わりながらの私の生き方の中での執筆だったので、その方向に筆力や語彙の選択が傾斜しただけのことであって、私には、詩風の分析的把握 poeti-analtyical grip に依って何か教科書でも作ることを狙っていた訳ではなかった。文明のエーテルの中で私達が忘れはじめている自然(実存)のリズムを復活しなくてはならないと思う私の内側の熱意が、このような四章からなる作品にごく自然の形で結果した。

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著者プロフィール

上野霄里

岩手県一関市在住。神学校を卒業、布教のため同地に移住するが、その後教団とは絶縁する。世界各国の芸術、思想家と親交を持つ。特に400通もの書簡を交わし合った、故ヘンリー・ミラー氏とは互いに胸奥を披瀝し合うほどの間柄で、往訪も含め、深交は最晩年まで変わらずに続けられた。

主なる著書『単細胞的思考』『放浪の回帰線』『運平利禅雅』『離脱の思考』『くがねの夢』『若者へのエファンゲリュウム。』

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